管理業務主任者試験 令和6年試験 問39

問39

マンションの管理費の滞納に関する次の記述のうち、民法、区分所有法、民事訴訟法及び破産法によれば、最も適切なものはどれか。
  1. 管理費の滞納者は、破産手続開始の決定を受けた場合には、管理組合に対して、同決定を受けた日の翌日以降の管理費の支払義務を負わない。
  2. 管理費が滞納されているマンションの住戸を購入した買主は、購入時点で前区分所有者の滞納の事実及びその額について知らなかった場合には、管理組合に対して当該滞納債務の支払義務を負わない。
  3. 管理費の滞納者が行方不明の場合であっても、管理組合は、その者に対して、滞納管理費の支払請求についての訴えを提起することができる。
  4. 管理規約に管理費債務については消滅時効を援用できない旨が定められている場合には、管理費の滞納者は、たとえ消滅時効が完成しても時効の援用をすることができない。

正解 3

問題難易度
肢18.0%
肢24.5%
肢382.5%
肢45.0%

解説

  1. 不適切。破産手続によって債務の免責を受けるには、破産手続開始の決定を受けた後、1か月以内に「免責許可の申立て」を行って免責許可の決定を受ける必要があります(破248条1項破253条1項)。また、免責されるのは、破産手続開始の原因に基づいて生じた債務(破産債権)に限られます(破2条5項)。
    本肢には誤りが2つあります。1つは、破産手続開始の決定のみで免責の効力が発生するとしている点であり、もう1つは、その決定後に発生した債権についても免責されるとしている点です。
    個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第四項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。
    免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
    この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。
    滞納者が破産手続開始の決定を受けた場合でも、その決定だけでは、当該滞納者は管理費の支払義務を免れるわけではない。R3-11-2
  2. 不適切。管理費その他の区分所有者が他の区分所有者に対して有する債権は、債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行うことができます(区8条)。特定承継人とは、売買・贈与・競売などによって特定の財産を引き継いだ人で、典型例は買主です。滞納を知らなかったとしても免責されないため、特定承継人である買主は、滞納管理費を支払う義務があります。
    前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
    専有部分の売買契約によって、滞納されていた管理費の支払義務は区分所有権を取得した買主に承継されるが、売主自身の支払義務が消滅するわけではない。R5-39-3
    競売手続によってマンションの区分所有権を取得した場合には、買受人は、前区分所有者の滞納管理費の支払義務を承継しない。R5-39-4
    管理費を滞納している区分所有者からその区分所有するマンションを購入した買主は、売主の滞納管理費債務を承継するが、当該債務に係る遅延損害金の債務は承継しない。R4-11-2
    滞納者が、所有している専有部分を売却し、区分所有者でなくなった場合、その専有部分の買受人である区分所有者が滞納管理費債務を承継し、当該滞納者は滞納管理費債務を免れる。R3-11-1
    競売によって区分所有権を買い受けた者は、通常の売買の場合と異なり、前区分所有者の滞納管理費の支払債務を承継しない。R1-10-1
    管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を売却した場合、買主は、売買契約の締結時に滞納の事実を知らなかったとしても、当該滞納管理費の支払義務を負う。H28-11-1
    管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を贈与した場合、受贈者が滞納管理費の支払義務を負い、当該区分所有者はその義務を免れる。H28-11-4
  3. [適切]。債務者が行方不明の場合でも、「公示送達」の方法によって訴えを提起することが可能です。公示送達とは、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、「いつでも受け取ることができる」旨を裁判所の掲示場に掲示することで、通常の送達に代える方法です(民訴111条)。
    通常、訴えを提起する際には、訴状に被告の住所を記載する必要があります。ただし、住所等が不明の場合には「住居所 不明」と記載し、公示送達の手続きで進めることが可能です(民訴110条1項)。
    公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。
    次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
    一 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
    二 第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
    三 外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
    四 第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
    管理費の滞納者が行方不明になった場合には、管理組合は、当該滞納者に対し、滞納管理費の支払についての訴えを提起することができない。R4-9-4
    Bが行方不明である場合であっても、AがBに対して裁判所に訴えを提起することはできる。R2-10-2
    管理費を滞納している区分所有者が行方不明の場合は、管理組合は、その者に対して、滞納管理費の支払請求についての訴えを提起することはできない。H30-11-4
  4. 不適切。「消滅時効を援用できない」という約定は、時効の利益を前もって放棄するものです。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民146条)とされており、この規定は強行法規であるため、当該約定は無効となります。したがって、区分所有者は本約定にかかわらず、時効を主張することができます。
    時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
    マンションの区分所有者全員が、「管理費債務の消滅時効の主張はしない」旨の文書をあらかじめ管理組合に提出している場合、各区分所有者は時効を主張することができない。H27-10-2
したがって適切な記述は[3]です。