管理業務主任者試験 令和6年試験 問38
問38
マンションに関する次の記述のうち、最高裁判所の判決によれば、適切なものはいくつあるか。- 管理人室と管理事務室が一体として利用することが予定され両室を機能的に分離することができない場合には、管理人室には構造上の独立性があるとしても利用上の独立性はないというべきであるから、管理人室は、区分所有権の目的とはならない。
- 各住戸(専有部分)からの専用排水管(枝管)は、その構造や設置場所いかんにかかわらず、専有部分に属しない建物の附属物であるから、同排水管に起因する水漏れ事故による損害の賠償は、管理組合がその責任を負う。
- 管理組合法人の規約において、理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等内の親族に限り、これを代理出席させることができる旨を定めることは認められず、当該規約は無効である。
- 管理者が共用部分の管理を行い、特定の区分所有者に当該共用部分を使用させることができる旨の規約の定めがある場合においても、各区分所有者は、当該特定の区分所有者に対し、共用部分の自己の持分割合相当額につき不当利得返還請求権を行使することができる。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
広告
正解 1
分野
科目:2 - 区分所有法等細目:7 - 判例問題
解説
- 適切。管理人室が構造上区分されているとしても、隣接する管理事務室と一体として利用され機能的に分離できない場合には、利用上の独立性がないため専有部分には当たらないと判示されています(最判平5.2.12)。このため当該管理人室は区分所有権の目的となりません。
共用部分である管理事務室とこれに隣接する管理人室があるマンションにおいて、右管理人室に構造上の独立性があるとしても、当該マンションの規模が比較的大きく、区分所有者の居住生活を円滑にし、その環境の維持保全を図るため、その業務に当たる管理人を常駐させ、管理業務の遂行に当たらせる必要があり、前記管理事務室のみでは、管理人を常駐させてその業務を適切かつ円滑に遂行させることが困難である場合には、両室は機能的に分離することができず、右管理人室は、利用上の独立性がなく、建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分に当たらない。
- 不適切。排水管については、本管は共用部分、本管から分岐して各住戸につながる枝管は専有部分とされますが、枝管はその構造及び設置場所に照らし、共用部分とされる部分があります(最判平12.3.21)。具体的には、各住戸の壁内部にあるものは専有部分、コンクリートスラブ内や天井裏に設置されている部分については共用部分(建物の附属物)とされます。共用部分とされた部分は管理組合の責任で維持管理を行います。したがって「構造や設置場所いかんにかかわらず」とする本肢は誤りです。
マンションの専有部分である甲室の床下コンクリートスラブと階下にある乙室の天井板との間の空間に配された排水管の枝管を通じて甲室の汚水が本管に流される構造となっている場合において、甲室から右枝管の点検、修理を行うことは不可能であり、乙室からその天井裏に入ってこれを実施するほか方法はないなど判示の事実関係の下においては、右枝管は、建物の区分所有等に関する法律二条四項にいう「専有部分に属しない建物の付属物」であり、区分所有者全員の共有部分に当たる。
- 不適切。理事はその資質・能力を認められて役職に就いているため、理事会には本人が出席するのが原則です。しかし、理事会への出席等その他理事に関する事項は、規約に委ねられていると解されています。理事に事故がある場合に、配偶者・一親等親族に限って代理出席(議決権の代理行使含む)を認める規約は、理事への信任関係を害するとまでは言えず有効とされます(最判平2.11.26)。標準管理規約でもこれを認める規定があります。
区分所有法四七条二項の管理組合法人の規約中、理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、その理事を代理して理事会に出席させることができる旨を定めた条項は、違法でない。
- 不適切。管理者が共用部分の管理を行い、特定の区分所有者に当該共用部分を使用させることができる旨の規約の定めがある場合には、その共用部分の管理は団体的規制に服すため、それに係る不当利得の請求権も「管理組合」のみが行使することができます(最判平27.9.18)。したがって「各区分所有者が…行使できる」とする本肢は誤りです。
区分所有建物の管理規約に,管理者が共用部分の管理を行い,共用部分を特定の区分所有者に無償で使用させることができる旨の定めがあるときは,この定めは,一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち他の区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を区分所有者の団体のみが行使することができる旨を含むものと解すべきであり,当該他の区分所有者は上記請求権を行使することができない。
広告
広告