管理業務主任者試験 令和6年試験 問3

問3

契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
  1. 委任者は、受任者に不利な時期になる場合や、当該委任契約が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする場合には、委任者にやむを得ない事由がない限り、当該契約を解除することができない。
  2. 管理組合が発注した大規模修繕工事契約は、施工会社がその修繕に着手した後は、管理組合の側からは、その損害を賠償しても当該契約を解除することができない。
  3. 管理組合が購入した防災用発電機に契約不適合がある場合に、当該契約不適合部分についての履行の追完請求としての修補請求や代金減額請求はできるが、当該売買契約を解除することはできない。
  4. 管理組合が、第三者に賃貸している敷地上の駐車場に対して行った保存行為が、第三者の意思に反する場合であっても、駐車場の目的を達することができるかぎり、第三者は、当該駐車場賃貸借契約を解除することができない。

正解 4

解説

  1. 不適切。委任は当事者がいつでも解除できます。相手方に不利な時期であったり、受任者の利益も目的とする場合には損害賠償責任を負うに過ぎず、解除できないわけではありません(民651条)。
    委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
    2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
    一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
    二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
  2. 不適切。請負契約では、仕事完成前であれば注文者は損害を賠償していつでも解除できます(民641条)。大規模修繕工事契約は請負に当たるため、損害を賠償すれば施工の着手後であっても解除することができます。
    請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
  3. 不適切。請負人の担保責任である、追完請求、代金減額請求、契約の解除および損害賠償請求の各権利は、それぞれ独立した権利であるため、併せて請求することができます。ただし、代金減額は追完請求を行った後でなければ請求できません(民564条)。
    前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
  4. [適切]。賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為を行おうとする場合、賃借人はこれを受忍する義務があります(民606条2項)。ただし、保存行為が賃借人の意思に反して行われ、そのために賃借した目的が達成できなくなる場合には、賃借人は解約解除することができます(民607条)。したがって、「目的を達することができるかぎり・・・解除できない」とする本肢は適切です。
    賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
    賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
したがって適切な記述は[4]です。