管理業務主任者試験 令和5年試験 問36

問36

専有部分及び共用部分の工事等に関する次の記述のうち、標準管理規約(単棟型)によれば、最も適切なものはどれか。
  1. 区分所有者は専有部分の床のフローリングの設置をしようとするときは、理事長にその旨を申請し、理事長の判断により書面による承認を受けなければならない。
  2. 専用使用部分である窓ガラスが、当該住戸の区分所有者の過失により破損した場合には、当該区分所有者の申請に基づき、管理組合が修繕する。
  3. 区分所有者が、屋上からの雨漏りにより専有部分の使用に支障が生じ緊急を要するため当該共用部分の保存行為を行ったが、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けなかったときは、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
  4. 共用部分のうち各住戸に付属する玄関扉の改良工事で住宅の性能向上に資するものについて、計画修繕としてこれを速やかに実施できる場合には、管理組合がその責任と負担において実施するものとする。

正解 4

解説

  1. 不適切。専有部分の修繕等のうち、共用部分または他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あからじめ理事長に申請し、書面で承認を受ける必要があります(標管[単]17条1項)。本承認を必要とするものとして、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更が例示されているため、フローリングの設置工事をするには理事長の書面による承認が必要です(標管[単]コ17条②)。
    区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
    修繕等のうち、第1項の承認を必要とするものは、「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのある」ものである。具体例としては、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等がある。
  2. 不適切。窓ガラスは規約上、共用部分とされますが、その住戸の区分所有者に専用使用権が与えられています。専用使用権が認められる部分の保存行為のうち通常の使用に伴うもの(例:窓ガラス破損時の入替え、バルコニーの清掃)は、専用使用権を有する者の責任と負担で行う必要があります(標管[単]21条1項)。したがって、過失により窓ガラスを破損した場合、区分所有者が修繕する必要があります(標管[単]コ21条④)。
    敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
    本条第1項ただし書の「通常の使用に伴う」保存行為とは、バルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入替え等である。
  3. 不適切。区分所有者が敷地及び共用部分等の保存行為を行おうとするときは、あらかじめ理事長に申請し、書面で承認を受ける必要があります。ただし、緊急性がある場合には当該申請・承認の手続きを省略することができます(標管[単]21条3項)。この規定に違反したときは、その保存行為にかかった費用は区分所有者の負担とされますが、本肢は緊急時で申請・承認が不要な場面なので、共用部分の保存行為に要した費用は原則どおり管理組合の負担となります(標管[単]21条4項)。
    区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。
    第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
  4. [適切]。窓、玄関扉など共用部分のうち各住戸に付属する部分の改良工事は、原則として管理組合がその責任と負担で行います。ただし、上記が計画修繕として速やかに実施できない場合には、申請・承認の手続きを経れば、区分所有者自らの責任と負担で行うことができます。本肢は「速やかに実施できる場合」なので区分所有者が行うことはできず、管理組合が実施することになります(標管[単]22条1項・2項)。
    共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。
    2 区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。
したがって適切な記述は[4]です。