管理業務主任者試験 令和5年試験 問4

問4

管理組合法人Aと施工会社Bとのマンションの外壁補修工事請負契約における工事代金に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
  1. Bが、Aに対し契約で定めた工事代金より高い金額を請求したところ、Aがそれに気づかずに請求された金額を支払った場合には、Aは、Bに対し、過払い分の返還を請求することはできない。
  2. BのAに対する請負代金債権について、AB間においてその譲渡を禁止する旨の特約があった場合に、BがAの承諾を得ないで行った当該債権の第三者に対する譲渡は無効である。
  3. AのBに対する請負代金債務について、Aの理事が当該債務を保証する旨の契約をBとの間で締結する場合に、その契約は、口頭の合意によっても成立する。
  4. AのBに対する請負代金の支払期日の前日に、地震で管理事務室が損壊したため、Aが支払期日にその代金を支払うことができなかった場合でも、Aは、Bに対する債務不履行責任を免れない。

正解 4

解説

  1. 不適切。法律上の原因なく支払った過払い分は不当利得となり、受領者はその利益を返還すべき義務を負います(民703条)。弁済者が債務の不存在を知っていたときは返還請求はできませんが、Aは請求額が多いことに気付かずに支払っており「知っていた」わけではないため、過払い分の返還請求が可能です(民705条)。
    法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
    債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
  2. 不適切。債権に譲渡禁止特約があっても、債権の譲渡自体の効力は妨げられず有効です(民466条2項)。債務者は、譲受人が特約の存在を知っていた、または重大な過失により知らなかった場合に、譲受人に対する履行拒絶などの抗弁を主張できるにとどまります(民466条3項)。
    当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
    前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
  3. 不適切。保証契約は書面(又は電磁的記録)でしなければなりません(民446条2項・3項)。口頭のみの合意では無効となります。
    2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
    3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
  4. [適切]。金銭支払債務の不履行については、①損害の発生や損害額の証明が不要、②不可抗力が免責事由とならない、という特則があります(民419条)。天災等の不可抗力により履行遅滞となった場合でも、これを抗弁とすることはできないため、Aは債務不履行責任を免れません。
    金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
    2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
    3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
したがって適切な記述は[4]です。