管理業務主任者試験 令和4年試験 問39

問39

次の記述のうち、判例によれば、適切なものはいくつあるか。
  1. 区分所有者の団体のみが共用部分から生ずる利益を収取する旨を集会で決議し、又は規約で定めた場合には、各区分所有者は、その持分割合に相当する利益についての返還を請求することはできない。
  2. 区分所有者の集会で複数の理事を選任し、理事長は理事会で理事の互選で選任する旨を規約で定めた場合には、理事の職は維持しつつ、理事長の職を解くことについて、理事会の決議で決することができる。
  3. 建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者を含む建物利用者、隣人、通行人等に対する関係でも、当該建物の建物としての基本的な安全性が欠けることのないように配慮すべき注意義務を負う。
  4. 管理組合の業務を分担することが一般的に困難な不在組合員に対し一定の金銭負担を求めることは、規約の変更に必要性及び合理性があり、不在組合員の受ける不利益の程度を比較衡量して一定の金銭負担に相当性のある場合には、受忍限度を超えるとまではいうことはできない。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ

正解 4

解説

  1. 適切。管理者が共用部分の管理を行い、特定の区分所有者に当該共用部分を使用させることができる旨の規約の定めがある場合には、その共用部分の管理は団体的規制に服すため、それに係る不当利得の請求権も「管理組合」のみが行使することができます(最判平27.9.18)。各区分所有者による返還請求は認められません。
    区分所有建物の管理規約に,管理者が共用部分の管理を行い,共用部分を特定の区分所有者に無償で使用させることができる旨の定めがあるときは,この定めは,一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち他の区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を区分所有者の団体のみが行使することができる旨を含むものと解すべきであり,当該他の区分所有者は上記請求権を行使することができない。
  2. 適切。理事長について「理事会で選任する」という規約があり、解任についての取り決めがない場合にどのように扱われるかという事例です。理事長の解任について規約で定めがない場合でも、選任は「理事長の職を解き,別の理事を理事長に定めることも総会で選任された理事に委ねる」趣旨も含まれるため、理事会の決議でによって理事長の職を解くことが可能とされています。(最判平29.12.18)。
    理事長を建物の区分所有等に関する法律に定める管理者とし,役員である理事に理事長を含むものとした上,役員の選任及び解任について総会の決議を経なければならないとする一方で,理事を組合員のうちから総会で選任し,理事の互選により理事長を選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合においては,理事の互選により選任された理事長につき,当該規約中の理事の互選により理事長を選任する旨の定めに基づいて,理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができる。
  3. 適切。建物の建築に携わる設計者・施工者・工事監理者には、建物の建築に関し、契約当事者以外の建物利用者・隣人・通行人に対しても安全注意義務を負うとされています。この安全注意義務を怠った場合、不法行為責任を問われることがあります(最判平19.7.6)。
    建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
  4. 適切。不在の組合員に対し、管理組合の運営に係る負担の一端を担わせる方法として追加の金銭負担を求める規約の変更は、その金銭負担に必要性と合理性がある場合には受忍すべき限度を超えないとされています(最判平22.1.26)。不在組合員は、役員となる義務を免れたり各種団体の保守管理活動に参加しなかったりするため、その不公平を是正しようとする規約の変更について必要性・合理性が認められた事例です。
    団地建物所有者全員で構成されるマンション管理組合の総会決議により行われた自ら専有部分に居住しない組合員が組合費に加えて住民活動協力金を負担すべきものとする旨の規約の変更は,建物の区分所有等に関する法律66条,31条1項後段にいう「一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」に当たらない
したがって適切なものは「四つ」です。