管理業務主任者試験 令和3年試験 問5

問5

マンションの管理組合Aの管理費に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も不適切なものはどれか。
  1. Aが、管理費を滞納している区分所有者Bに対して、滞納管理費を請求する訴訟を提起し、勝訴した場合には、当該滞納管理費債権は、確定判決を得た時から10年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
  2. Aが、管理費を滞納している区分所有者Cに対して、管理費の支払を催告した場合に、その時から6箇月を経過するまでに管理組合が再度催告をしたときには、再度の催告は時効の完成猶予の効力を有しない。
  3. 管理費を滞納している区分所有者Dが、Aに対して、管理費を滞納していることを書面により認めたときは、その時から時効の更新の効力が生じる。
  4. Aの管理規約において、各区分所有者は、Aに対する債務の消滅時効を主張することができない旨が定められていた場合には、区分所有者Eは、滞納した管理費の債務について、時効が完成したとしても、それによる債務の消滅を主張することができない。

正解 4

解説

  1. 適切。確定判決により権利が確定すると、それが本来5年など短い時効期間の債権であっても、時効期間は10年となります(判決確定時に弁済期が到来していることが前提)。したがって、判決確定後10年間権利行使をしなければ消滅時効にかかります(民169条1項)。
    確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
  2. 適切。最初の催告により6カ月間の完成猶予が生じますが、その猶予期間中に行われた追加の催告は、猶予効果を持ちません(民150条)。時効の完成を妨げたいときは、催告後、裁判上で請求するなどの措置をとる必要があります。
    催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
    2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
  3. 適切。債務者が権利を承認すると、時効の進行はリセットされ、新たに最初から進行します(時効の更新)。本肢ではDが債務の存在を認めたので、その時に時効の更新の効力が生じます(民152条1項)。承認方法に形式的制限はありませんが、書面での債務承認は典型例です。
    時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
  4. [不適切]。時効による利益はあらかじめ放棄できないため、規約・契約条項で事前放棄を定めても無効です(民146条)。無効であるということは、定めが存在しないのと同様であるため、時効が完成すれば区分所有者Eは消滅時効を主張できます。
    時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
したがって不適切な記述は[4]です。