管理業務主任者試験 令和3年試験 問3

問3

マンションの管理組合法人Aは、区分所有者Bに対して有する200万円の管理費債権を保全するため、Bの債務者Cに対する500万円の金銭債権を代位行使した場合に関する記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
  1. Aの代位権の行使は、Bの代理人としてBの権利を行使するものであるから、Aが自己の権利として行使することは認められない。
  2. Aが代位権を行使をすることができる債権額は500万円であり、Bに対する債権額である200万円に制限されない。
  3. CがBに対して反対債権を有していたときでも、Cは、Aに対して、相殺の抗弁を主張することができない。
  4. Aは、Cに対して、A自身への直接の支払を求めることができる。

正解 4

解説

  1. 不適切。代理人としてではありません。債権者代位権は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を債権者が行使できるものです。債権者が自己の権利として行使するものであり、代理関係は存在しません(民423条)。
    債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
  2. 不適切。被代位権利が可分の場合、債権者は自らの債権額の範囲でしか代位行使できません(民423条の2)。BがCに対して有する権利は金銭債権であり可分のため、Aが行使できるのは200万円に制限されます。500万円全額を行使することはできません。
    債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。
  3. 不適切。債権者代位権が行使された場合、第三債務者は債務者に対して主張できる抗弁をそのまま債権者にも対抗できます(民423条の4)。したがって、Cが相殺可能な債権を有していた場合は、Aに相殺を対抗することができます。
    債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
  4. [適切]。被代位権利が「金銭の支払い」または「動産の引渡し」を目的とする場合は、債権者は第三債務者に対し、直接引き渡すよう請求できます(民423条の3)。BがCに対して有する権利は金銭債権なので、債権者Aは第三債務者Cに対し、直接の支払いを求めることができます。
    債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。
したがって誤っている記述は[4]です。