管理業務主任者試験 令和3年試験 問2

問2

A、B、Cが、マンションの一住戸甲を共同して購入するための資金として、Dから900万円を借り受け、Dとの間で、各自が連帯してその債務を負う旨の合意をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も不適切なものはどれか。ただし、A、B、Cの間の負担部分は等しいものとし、元本900万円以外は考慮しないものとする。
  1. Aが、Dに対して600万円を弁済し、残債務の支払を免除された場合に、Bは、Dから300万円の支払の請求を受けたときは、これを拒むことができない。
  2. Bが、Dに対して、270万円を弁済した場合に、Bは、AとCのそれぞれに対して、90万円について求償することができる。
  3. Cが、Dに対して有する600万円の代金債権との相殺を援用しない場合に、Aは、Dから900万円の支払請求を受けたときは、CがDに対して当該債権を有することを理由に600万円についてDの支払請求を拒むことができる。
  4. Cが、Dに対して、700万円を弁済したが、Bに資力がない場合に、Bから償還を受けることができないことについてCに過失がないときは、Cは、Aに対して、350万円を求償することができる。

正解 3

解説

  1. 適切。連帯債務者の1人の生じた事由は、更改・混同・相殺を除き、その効力は原則として他の連帯債務者には及びません(民441条:相対効の原則)。Aが受けた残債務(300万円)の免除はB・Cに影響を与えないため、BはDからの残債務の請求を拒むことはできません。
    第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
  2. 適切。連帯債務者が弁済した場合、その額が自己負担部分を超えるかどうかにかかわらず、共同免責額に各負担割合を掛けた額を限度として他の連帯債務者に求償することができます(民442条1項)。Bは270万円を弁済しており、連帯債務者A・B・C間の負担部分は等しい(1/3ずつ)ため、BはA・Cそれぞれに対し、「270万円×1/3=90万円」を求償することができます。
    連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
  3. [不適切]。600万円全額ではありません。他の連帯債務者が相殺を援用しない場合、他の連帯債務者は、自己の負担部分を限度として、相殺可能額について債務の履行を拒むことができます(民439条2項)。連帯債務者A・B・C間の負担部分は等しい(1/3ずつ)ため、拒めるのはCの負担部分である「900万円×1/3=300万円」が限度となります。
    前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
  4. 適切。連帯債務者の中にBのような無資力者がいる場合、無資力者が償還できない部分は、求償者と他の連帯債務者が分割して負担します(民444条1項)。700万円を弁済したCは、A・Bそれぞれに対して「700万円×1/3≒233万円」の求償権を取得しますが、Bが無資力者であるため、Bの償還すべき233万円はA・Cが半分ずつ(約117万円)負担します。したがって、CはAに対し「233万円+117万円=350万円」を求償することができます。
    連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。
したがって不適切な記述は[3]です。