管理業務主任者試験 令和3年試験 問1

問1

Aが、Bとの間で、自己の所有するマンションの一住戸甲をBに売却する旨の契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
  1. Aが、所有権を移転する意思がないにもかかわらず、Bと売買契約を締結した場合に、Bがその真意を知り、又は知ることができたときは、Aは、Bに対して当該契約の無効を主張することができる。
  2. Aが、所有権を移転する意思がないにもかかわらず、Bと通謀して売買契約を締結し、所有権移転登記を済ませた後に、BがAに無断で、その事情を知らない第三者Cに甲を転売した場合に、Cにその事情を知らないことについて過失があるときは、Aは、Cに対して、虚偽表示による当該売買契約の無効を主張することができる。
  3. Aが、Bの詐欺を理由として当該売買契約を取り消した場合に、Aの取消し前に、Bが、その事情を知らず、かつその事情を知らないことについて過失のある第三者Dに甲を転売していたときは、Aは、Dに対して取消しの効果を主張することができない。
  4. Aが、Bの強迫を理由として当該売買契約を取り消した場合に、Aの取消し前に、Bが、その事情を知らず、かつその事情を知らないことについて過失のない第三者Eに甲を転売していたときは、Aは、Eに対して取消しの効果を主張することができない。

正解 1

解説

  1. [適切]。意思表示に対応する真意を欠く意思表示は、心裡留保となります。心裡留保は原則として有効ですが、相手方がその真意(本気ではないこと)について善意無過失ではないときは無効となります(民93条1項)。Bが善意無過失でなければ、AはBに対して売買契約の無効を主張することができます。
    意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
  2. 不適切。相手方と通謀して行った虚偽の意思表示は、虚偽表示となります。虚偽表示は原則として無効ですが、「善意」の第三者に対しては無効を対抗できません(民94条)。第三者Cは事情を知らずに購入している(善意)ため、Aは虚偽表示による無効を主張することはできません。
    相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
    2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
  3. 不適切。詐欺による意思表示の取消しは、「善意無過失」の第三者に対しては対抗できません(民96条3項)。第三者Dは事情を知らないことについて過失がある(有過失)ため、Aは詐欺による取消しを主張することができます。
    前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
  4. 不適切。強迫による取消しは、詐欺の場合と異なり、誰に対しても無条件に対抗することができます。これは強迫の場合、意思表示者を保護する必要が高いためです。よって、第三者Eが善意無過失であっても、Aは強迫による取消しを主張することができます。
したがって適切な記述は[1]です。
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