管理業務主任者試験 令和2年試験 問37

問37

区分所有者の責任に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、規約に別段の負担割合の定めはないものとする。
  1. 区分所有法第7条第1項に係る債権については、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
  2. 管理組合が権利能力なき社団の性質を有する場合には、組合財産の有無にかかわらず、各区分所有者は、連帯して無限責任を負う。
  3. 管理組合が法人である場合には、区分所有者は、その法人の総財産の範囲で有限責任を負う。
  4. 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき、区分所有者の負担は共用部分の持分の割合に応じた負担であるが、第三者との関係では連帯かつ無限責任を負う。

正解 1

解説

  1. [正しい]。区分所有者が有する管理費等に関する債権は、特定承継人にも行使できます(区8条)。例えば、区分所有者が管理費等の債務を残したまま専有部分を譲渡した場合、その債権は新たな所有者にも請求可能です。
    前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
  2. 誤り。法人格を持たない管理組合(3条組合)が「権利能力なき社団」の性質を有する場合、債務者の責任財産となるのは管理組合が総有する財産に限られ、個々の構成員である各区分所有者は直接的な責任を負いません(最判昭48.10.9)。つまり、構成員各自は有限責任です。
    【補足】
    権利能力なき社団とは、①団体として組織を備えていること、②多数決の原則が行われていること、③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続すること、④組織によって、代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること、の4つを備えた団体です。
    権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負わない。
  3. 誤り。管理組合が法人である場合、法人の債務についてはまず法人の財産から弁済されます。しかし、法人の財産をもって債務を完済できない場合には、区分所有者が持分割合に応じて責任を負います(区53条1項)。つまり、分割無限責任です。
    管理組合法人の財産をもってその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
  4. 誤り。管理者がその職務の範囲内で第三者と行った取引によって生じた債務については、原則として、共用部分の持分割合に応じて責任を負うとされています。分割的に無限責任を負うのであり、連帯責任とする点が誤りです(区29条1項)。
    管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。
したがって正しい記述は[1]です。