管理業務主任者試験 令和2年試験 問5

問5

Aがマンション管理業者Bの代理人と称して、マンション甲の管理組合Cとの間で管理委託契約(以下、本問において「本件契約」という。)を締結したが、Aは代理権を有していなかった場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
  1. CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内に本件契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をしたが、当該期間内にBから確答を得られなかった場合には、Bは、追認をしたものとみなされる。
  2. Cは、本件契約の締結時に、Aが代理権を有していないことを知らなかったときは、Bが追認しない間は、本件契約を取り消すことができる。
  3. Bが本件契約の追認を拒絶した場合には、Cは、Aに対し、Cの選択に従い、損害賠償の請求又は契約の履行を請求することができる。
  4. Aが本件契約の締結時に制限行為能力者であった場合に、Aの代理行為が制限行為能力を理由に取り消されたときは、CはAに対し、無権代理人の責任を追及することができない。

正解 1

解説

  1. [誤り]。追認拒絶とみなされます。無権代理人の相手方は、本人に対して相当の期間を定めて追認するかどうか確答をするよう催告をすることができます。期間内に確答がなかった場合、追認は拒絶されたものとみなされます(民114条)。本人の知らないところで代理行為が勝手に行われたわけですから、取引の安全よりも本人の保護が優先されるのです。
    前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
  2. 正しい。無権代理行為の相手方が代理権の不存在について善意だった場合、追認があるまでは、当該相手方はその意思表示を取り消すことができます(民115条)。よって、CはAが代理権を有しないことを知らなかったときは、契約を取り消すことができます。
    代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
  3. 正しい。本人が追認をしなかった場合、代理人の不存在については善意無過失の相手方は、無権代理人に対して履行または損害賠償責任を追及することができます。履行と損害賠償責任のどちらを選択するかは、相手方が選択できます(民117条1項)。
    他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
  4. 正しい。無権代理人が制限行為能力者であった場合、その制限行為能力者に対しては無権代理人の責任(履行・損害賠償責任)を追及することができません(民117条2項)。代理人となった制限行為能力者が、不当な意思表示をしてしまった場合に保護する目的があります。
    前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
    一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
    二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
    三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
したがって誤っている記述は[1]です。