管理業務主任者試験 令和2年試験 問4
問4
マンションにおいて不法行為が発生した場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。- マンション甲の管理組合法人でない管理組合Aから甲の外壁の修繕工事を依頼された施工会社Bの従業員Cが、建物の周囲に足場を組んでいたところ、その部品が外れて落下し、通行人Dが負傷した場合には、Aが損害賠償責任を負う。
- マンション乙の外壁のタイルが落下し、通行人Eが負傷した場合には、管理組合法人FがEに対して負う損害賠償債務は、EがFに損害賠償を請求した時点で履行遅滞になる。
- マンション内において、区分所有者Gが所有し、現に居住している専有部分に設置又は保存に瑕疵があり、それにより他人に損害が発生した場合には、当該瑕疵が丙の建築工事を請負った施工会社Hの過失によるものであっても、Gは損害賠償責任を免れない。
- マンション丁において、区分所有者Iの17歳の子Jが、丁の敷地内を自転車で走行中に不注意で他の区分所有者Kに衝突し、Kが負傷した場合には、KはIに対して損害賠償を請求することはできるが、Jに対しては、原則として損害賠償を請求できない。
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正解 3
分野
科目:1 - 民法細目:5 - 不法行為等
解説
- 誤り。請負契約の注文者は、原則として請負人が第三者に与えた損害を賠償する責任を負いません(民716条)。足場の組立て・管理は請負人Bの業務であり、Aが工事の方法を指図して過失があった等の特段の事情がない限り、Aは責任を負いません。この事例で不法行為を追う可能性があるのは、従業員Cとその使用者である施行会社Bです。
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
- 誤り。請求時点ではありません。不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生の時点で当然に履行期が到来し直ちに履行遅滞となります(最判昭37.9.4)。催告の必要もありません。
不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。
- [正しい]。工作物の設置・保存の瑕疵によって生じた損害については、占有者に一次的責任があります。この際、占有者が損害発生の防止に必要な注意をしたときは、その責任は所有者に移ります(民717条1項)。所有者の責任は無過失責任のため、Gは責任を免れません。ただし、その損害原因を作った施行会社Hに対して求償することができます(民713条3項)。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
- 誤り。不法行為をした者が責任能力のない未成年者である場合には、行為者本人は責任を負わず、監督義務者(本肢ではI)が代わりに損害賠償の責任を負うとされています(民712条民714条1項)。判例では責任能力を有する年齢を12歳前後としており、17歳は通常この責任能力を備えるため、J自身が直接責任を負います。したがって、KはJに損害賠償を請求できます。
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
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