管理業務主任者試験 令和2年試験 問3
問3
Aが所有するマンションの一住戸甲の売却に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。- 成年被後見人であるAが、甲を第三者に売却した場合に、Aが成年後見人Bの事前の同意を得ていたときは、Aは、甲の売買を取り消すことができない。
- 行為能力者であるAが、Cを代理人として甲を第三者に売却した場合に、代理行為の時にCが被保佐人であったときは、Aは、Cの制限行為能力を理由に、甲の売買を取り消すことができる。
- 被保佐人であるAが、保佐人Dの同意を得ることなく甲を売却した後に、相手方がAに対し、1箇月以上の期間を定めて、Dの追認を得るべき旨の催告をした場合において、Aがその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、Dがその行為を追認したものとみなされる。
- 被保佐人であるAが甲を売却しようとした場合に、保佐人であるEが、Aの利益を害するおそれがないにもかかわらずこれに同意をしないときは、家庭裁判所は、Aの請求により、Eの同意に代わる許可を与えることができる。
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正解 4
分野
科目:1 - 民法細目:1 - 総則・意思表示
解説
- 誤り。成年後見では、保佐人や補助人と異なり「同意」という制度はなく、成年後見人が財産に関する法律行為全般を包括的に代理して成年被後見人を支援します。成年後見の対象は"事理弁識能力を欠く常況にある者"ですから、同意をしてもそのとおりに意思表示することが期待できないためです。よって、Aが後見人から同意を得ていても、契約を取り消すことができます(民9条)。
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
- 誤り。代理人が制限行為能力者である場合でも、代理行為の効果は本人に有効に帰属し、代理人自身の行為能力の制限を理由としてその代理行為を取り消すことはできません(民102条)。したがって、代理人が被保佐人であることを理由に取り消すことはできません。
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
- 誤り。所有する不動産の売買行為は、保佐人の同意を要する事項とされています。同意なくこれらの行為が行われた場合、取り消しうる状態に置かれるため、相手方は、制限行為能力者本人または保佐人に対し、追認の確答をするよう催告することができます。この際、誰に催告したかによって、確答をしなかったときの法律効果が異なります(民20条2項・4項)。
- 制限行為能力者本人に対して催告
- その行為を取り消したものとみなす
- 保佐人に対して催告
- その行為を追認したとみなす
なお、1カ月以上の「期間を定めた催告→確答をしなかったときに追認」の流れは、制限行為能力者が行為能力者になった後の催告に関するものです。2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
・・・
4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 - [正しい]。被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず、保佐人が同意をしないとき、被保佐人の請求を受けた家庭裁判所は、同意に代わる許可をすることができます(民13条3項)。補助にも同様の制度があります。
保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
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