管理業務主任者試験 令和元年試験 問6
問6
同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。- AB間の売買契約を、売主Aが、買主Bの詐欺を理由として取り消した場合においては、Aの原状回復義務とBの原状回復義務とは同時履行の関係に立たない。
- AB間の建物の賃貸借契約が期間の満了により終了する場合において、それに伴う賃貸人Aの敷金返還債務と賃借人Bの建物明渡債務とは、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立たない。
- AB間の借地契約の終了に伴い、賃貸人Aに対して賃借人Bの建物買取請求権が行使された場合においては、その土地の賃貸人Aの建物代金債務と賃借人Bの建物土地明渡債務とは、同時履行の関係に立つ。
- AB間の金銭消費貸借契約にかかる担保のために、債権者Aに対して債務者Bが、自己所有の土地に抵当権を設定した場合においては、Aの抵当権設定登記の抹消義務とBの債務の弁済とは、同時履行の関係に立たない。
広告
正解 1
分野
科目:1 - 民法細目:4 - 契約
解説
- [誤り]。売買契約が取り消された後の原状回復義務は、同時履行の関係に立ちます(最判昭47.9.7)。
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
- 正しい。敷金の返還請求権は、賃貸借が終了し賃借物を返還をした時に生じるため、建物の明渡しが先、敷金返還が後の関係になります(最判昭49.9.2)。
家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。
- 正しい。建物買取請求権の行使により、地主と間で建物の売買契約が成立したものとみなされます。建物を目的物とする売買として考えるため、代金支払いと建物引渡しは同時履行の関係に立ちます(大判昭7.1.26)。
借地法十条の買取請求権が行使されたときは、当事者間に地上物件につき時価による売買契約が成立したと同一の効果を生じ、当事者は互いに同時履行の抗弁権を有する。
- 正しい。抵当権が消滅するのは債務の弁済があった後なので、債務の弁済が先、抵当権の抹消登記義務が後の関係になります(最判昭57.1.19)。
抵当債務は、抵当権設定登記の抹消登記手続より先に履行すべきもので、後者とは同時履行の関係に立たない。

広告
広告