管理業務主任者試験 令和元年試験 問5
問5
Aが、Bに対するCの債務を保証するためBとの間で保証契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- AがCの委託を受けて保証人となり、保証債務を弁済した場合において、BがC所有の不動産に抵当権の設定を受けていたときは、Aは、Bの同意を得なければ、Bに代位して当該抵当権を実行することができない。
- AがCの委託を受けずに保証人となったが、それがCの意思に反する場合において、AがCに代わり弁済をしたときは、Aは、弁済の当時にCが利益を受けた限度で求償することができる。
- BC間で特定物の売買を内容とする契約が締結され、売主Cの目的物引渡債務についてAが保証人となった場合において、Aは、Cの債務不履行により契約が解除されたときの代金返還債務については、特に保証する旨の意思表示のない限り、責任を負わない。
- AがCの委託を受けずに保証人となった場合において、Aは、Cに対し、事前の求償権を行使することはできない。
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正解 4
分野
科目:1 - 民法細目:3 - 債権・保証
解説
- 誤り。債務者のために弁済した者は、当然に債権者に代位します(民499条)。これには主債務者のために弁済した保証人も含まれます。債権者に代位した者は、債権者が有していた債権や担保権を行使することができます。一部弁済の場合には、権利の行使には債権者の同意が必要ですが、全部弁済の場合には同意不要で権利行使できます(民501条民502条)。したがって、保証人Aは代位して抵当権を実行することができ、この際債権者Bの同意は不要です。
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。
- 誤り。委託を受けない保証人は、事前の求償権の行使ができないほか、主債務者に対する求償権が以下のように一部制限されます(民462条)。
- 委託を受けない保証人
- 弁済時に主債務者が利益を受けた限度(利息、費用、損害賠償を含まない)
- 主債務者の意思に反して保証をした者
- 求償時の現存利益の限度
第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。
2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
3 第四百五十九条の二第三項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。 - 誤り。保証債務の範囲は、主債務に関する利息、違約金、損害賠償など従たるすべてのものを含みます(民447条1項)。特定物売買の売主のための保証人は、売主の買主に対する債務不履行の責任を負うという趣旨でなされるため、特に反対の意思がない限り、解除後の原状回復義務についても保証の責任を負うものとされています(最判昭40.6.30)。
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
特定物の売買契約における売主のための保証人は、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても、保証の責に任ずるものと解するのが相当である。
- [正しい]。委託を受けない保証人には、事前の求償権がありません。事前の求償権とは、後から求償するのが難しい状況(①主債務者の破産、②債務の弁済期の到来、③保証人が債権者に弁済する旨の判決言渡し)のとき、あらかじめ求償権を行使できる権利で、委託を受けた保証人だけに認められています(民460条)。
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
一 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
二 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
三 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。
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