管理業務主任者試験 平成30年試験 問35

問35

マンションにおける平穏な居住環境の維持を目的として、暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)への専有部分の貸与を禁止する場合等における次の記述のうち、区分所有法の規定、標準管理規約及び判例によれば、最も不適切なものはどれか。
  1. 組合員が、その専有部分を賃貸する場合、契約の相手方が暴力団員でないこと及び契約後に暴力団員にならないことを確約することを、当該賃貸借契約に定めなければならない。
  2. 組合員が、その専有部分を賃貸する場合、契約の相手方が暴力団員であることが判明したときには、管理組合は、相当の期間を定めた催告後、区分所有者に代理して解約権を行使することができることを、当該賃貸借契約に定めなければならない。
  3. 組合員が所有する専有部分を暴力団組長に賃貸した場合、常時暴力団員が出入りするなど、居住者の日常生活に著しい障害を与えているときは、管理組合の管理者又は集会において指定された区分所有者は、区分所有法第60条に基づき、当該専有部分の占有者に弁明の機会を与え、当該賃貸借契約の解除及び専有部分の引渡しを請求することができる。
  4. 暴力団員である者又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者は、管理組合の役員となることができない。

正解 2

解説

  1. 適切。規約に暴力団員の排除条項を定めるときは、区分所有者が専有部分を貸与する際には、貸与に係る契約書に「契約の相手方が暴力団員でないこと、契約後に暴力団員にならないことを確約すること」を定める必要があります(標管[単]19条の2第1項1号)。
    一 契約の相手方が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第六号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約すること。
  2. [不適切]。催告は不要です。規約に暴力団員の排除条項を定めるときは、専有部分の貸与に係る契約の相手方が暴力団員であることが判明した際に、「区分所有者は無催告で解除できること」「管理組合が代理して解除権を行使できること」を貸与に係る契約書に定める必要があります(標管[単]19条の2第1項2号・3号)。
    【補足】
    暴力団排除条例において、暴力団員と判明した場合の無催告解除の定めを契約条件とする努力義務が課されています。
    二 契約の相手方が暴力団員であることが判明した場合には、何らの催告を要せずして、区分所有者は当該契約を解約することができること。
    三 区分所有者が前号の解約権を行使しないときは、管理組合は、区分所有者に代理して解約権を行使することができること。
  3. 適切。専有部分を暴力団の事務所として使用している場合には、他の区分所有者等に生命・身体に危害が及ぶ現実的な可能性があり、また不安や恐怖も現実的なものあるとして共同利益に反する行為と認定されます(判例)。共同利益違反があり、他の方法で解決することが難しい場合には、占有者に対し引渡しを請求する訴訟を提起することができます(区60条1項)。引渡し請求の集会決議に先立って必要となる弁明の機会は、占有者に対して与えれば足り、区分所有者には与える必要はありません(最判昭62.7.17)。
    第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
    建物の区分所有等に関する法律六〇条一項に基づき、占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する訴えを提起する前提として、集会の決議をするには、あらかじめ当該占有者に対して弁明の機会を与えれば足り、当該専有部分の区分所有者に対して弁明の機会を与えることを要しない。
  4. 適切。暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)であることは、管理組合の役員の欠格事由とされています(標管[単]36条の2第3号)。
    次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。・・・
    三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)
したがって不適切な記述は[2]です。