管理業務主任者試験 平成30年試験 問10

問10

マンションの管理費の滞納等に関して、管理業務主任者が管理組合の管理者等に対して行った次の説明のうち、誤っているものの組合せはどれか。
  1. 滞納管理費の額が60万円以下のときは、民事訴訟法に定める「少額訴訟」の手続によらなければなりません。
  2. 管理費を滞納している区分所有者が死亡した場合、当該区分所有権を取得する相続人が決定していなくても、すべての相続人に対し、その法定相続分に応じて滞納管理費を請求することができます。
  3. 専有部分の売買契約によって、区分所有権を取得した買主は、売主が滞納していた管理費の支払債務を負いますが、売主の支払債務がなくなるわけではありません。
  4. 区分所有者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該区分所有者は、破産手続開始決定の日の翌日以降の管理費の支払債務を負わなくてよいことになります。
  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ

正解 2

問題難易度
肢15.7%
肢278.7%
肢39.0%
肢46.6%

解説

  1. 誤り。訴額が60万円以下である場合には少額訴訟を利用することができますが、これは権利であって義務ではありません(民訴368条1項)。原告は少額訴訟に限らず、通常訴訟による提起も選択可能であるため、この説明は誤りです。
    簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
    少額訴訟によって訴えを提起する場合、その上限額は60万円である。R6-40-1
    Aが、同一の年に同一の簡易裁判所において、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる回数には制限がある。R6-40-3
    Bが滞納している管理費の総額が70万円である場合に、Aは、訴訟の目的の価額を60万円として少額訴訟を利用することができる。R4-10-ウ
    「少額訴訟」による場合は、通常訴訟に比べ、少ない経済的負担で迅速かつ効果的に解決することができるが、訴訟の目的の価額が60万円以下に制限されるため、滞納額が60万円を超えるときは、制限額以下に分割したとしてもこの手続を利用できない。R3-10-4
    少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる回数は、同一人が、同一の簡易裁判所において、同一年に10回までである。R2-11-1
    Aが、同一の年に同一の簡易裁判所において、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる回数には制限がある。H29-10-3
    滞納額140万円の支払いを求める訴えを簡易裁判所に提起する場合には、民事訴訟法上の少額訴訟制度を利用することができる。H28-10-1
  2. 正しい。被相続人が死亡時に有していた債権・債務は、相続開始の時にその相続分に応じて各共同相続人に承継されます(民896条民899条)。この際、可分債務である管理費支払債務は、遺産分割を待たずに法律上当然に分割され、各共同相続人がその法定相続分に応じて承継します(大決昭5.12.4)。したがって、遺産分割協議が成立する前でも、相続人に対して滞納管理費の請求をすることができます。
    相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
    各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
    債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきである。
    管理費を滞納している区分所有者が死亡した場合、遺産分割により当該区分所有者の区分所有権を取得する相続人が決定するまでは、管理組合はその滞納している管理費を請求することができない。R7-39-3
    管理組合は、相続人に対し、被相続人である前区分所有者の滞納管理費を請求することができるが、相続人に支払遅延の責任はないため、その遅延損害金を請求することはできない。R7-39-4
    管理費の滞納者が死亡した場合は、その相続人が、当該マンションに居住しているか否かにかかわらず、それぞれの相続分に応じて、当該滞納管理費債務を承継する。R5-40-2
    管理費を滞納している区分所有者が死亡した場合、遺産分割によって当該マンションを相続した相続人が滞納債務を承継し、他の相続人は滞納債務を承継しない。R4-9-2
    本件契約の期間が満了する前に、Bが死亡した場合、Bに相続人がいる場合でも、本件契約は終了する。H27-44-4
  3. 正しい。管理費その他の区分所有者が他の区分所有者に対して有する債権は、債務者である区分所有者の特定承継人に対して行うことができます(区8条)。
    条文から分かるように、本来の債務者たる当該区分所有者に加えて、特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり、前所有者の支払債務が新所有者に移転するわけではありません。両者の債務は併存し、いわゆる不真正連帯債務の関係になります(東京高判平17.3.30)。
    前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
    債務者たる当該区分所有者の債務とその特定承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解される
    管理費が滞納されているマンションの住戸を購入した買主は、購入時点で前区分所有者の滞納の事実及びその額について知らなかった場合には、管理組合に対して当該滞納債務の支払義務を負わない。R6-39-2
    専有部分の売買契約によって、滞納されていた管理費の支払義務は区分所有権を取得した買主に承継されるが、売主自身の支払義務が消滅するわけではない。R5-39-3
    競売手続によってマンションの区分所有権を取得した場合には、買受人は、前区分所有者の滞納管理費の支払義務を承継しない。R5-39-4
    管理費を滞納している区分所有者からその区分所有するマンションを購入した買主は、売主の滞納管理費債務を承継するが、当該債務に係る遅延損害金の債務は承継しない。R4-11-2
    滞納者が、所有している専有部分を売却し、区分所有者でなくなった場合、その専有部分の買受人である区分所有者が滞納管理費債務を承継し、当該滞納者は滞納管理費債務を免れる。R3-11-1
    競売によって区分所有権を買い受けた者は、通常の売買の場合と異なり、前区分所有者の滞納管理費の支払債務を承継しない。R1-10-1
    管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を売却した場合、買主は、売買契約の締結時に滞納の事実を知らなかったとしても、当該滞納管理費の支払義務を負う。H28-11-1
    管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を贈与した場合、受贈者が滞納管理費の支払義務を負い、当該区分所有者はその義務を免れる。H28-11-4
  4. 誤り。破産手続によって債務の免責を受けるには、破産手続開始の決定を受けた後、1か月以内に「免責許可の申立て」を行って免責許可の決定を受ける必要があります(破248条1項破253条1項)。また、免責されるのは、破産手続開始の原因に基づいて生じた債務(破産債権)に限られます(破2条5項)。
    本肢には誤りが2つあります。1つは、破産手続開始の決定のみで免責の効力が発生するとしている点であり、もう1つは、その決定後に発生した債権についても免責されるとしている点です。
    個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第四項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。
    免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
    この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。
    管理費の滞納者は、破産手続開始の決定を受けた場合には、管理組合に対して、同決定を受けた日の翌日以降の管理費の支払義務を負わない。R6-39-1
    滞納者が破産手続開始の決定を受けた場合でも、その決定だけでは、当該滞納者は管理費の支払義務を免れるわけではない。R3-11-2
したがって誤っているものの組合せは「ア・エ」です。