管理業務主任者試験 平成30年試験 問6
問6
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- 不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することはできない。
- 不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明し、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。
- 使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない。
- 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
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正解 4
分野
科目:1 - 民法細目:5 - 不法行為等
解説
- 誤り。胎児は相続に関しては既に生まれたものとみなされるため、胎児である間に親が不法行為により死亡した場合、損害賠償請求権は胎児に相続されます(民886条1項)。したがって、出生後に加害者に対して請求を行うことができます。
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
- 誤り。不法行為を受けた被害者の慰謝料請求権は、被害者が死亡したときには当然に相続の対象となります(最判昭41.11.1)。損害賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為を必要としません。
不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。
- 誤り。使用者責任が成立する前提として、被用者が事業執行中に不法行為を行ったことを要します。不法行為の成立には行為者の「故意・過失」が要求されるため、被用者に過失がない場合はそもそも不法行為が成立せず、使用者責任も生じません(民709条)。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- [正しい]。工作物の設置・保存の瑕疵によって生じた損害については、占有者に一次的責任があります。この際、占有者が損害発生の防止に必要な注意をしたときは、その責任は所有者に移ります(民717条1項)。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
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