管理業務主任者試験 平成30年試験 問4

問4

Aは、Bに対し、Aが所有するマンションの1住戸甲(以下、本問において「甲」という。)に抵当権を設定する旨の代理権を授与していた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Bが、Cとの間で、甲の売買契約を締結した場合において、Bの無権代理行為について表見代理が成立するときでも、Cは、Aに対して表見代理の成立を主張せず、Bに対して、無権代理人としての責任を追及することができる。
  2. AがBに代理権を授与した時に、Bが制限行為能力者であった場合は、Bは、代理人となることはできない。
  3. Bは、Aが復代理人の選任について拒否し、かつ、やむを得ない事由がない場合でも、自己の責任で復代理人Dを選任することができる。
  4. Bがやむを得ない事由により復代理人Eを選任した場合、Eは、Bの名においてBを代理する。

正解 1

解説

  1. [正しい]。表見代理と無権代理人の責任は互いに独立した制度とされており、両方の要件が成立する場合に、どちらを追及するかは自由です(最判昭62.7.7)。よって、表見代理が成立する場合でも、相手方はあえてその主張をせず、無権代理人に責任追及をすることができます。
    無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法一一七条の責任を問うことができるものと解するのが相当である
  2. 誤り。代理人が制限行為能力者であること自体は、代理権の有効性に影響しません。制限行為能力者でも代理人になれます(民102条)。ただし、代理人となった後で、その者が後見開始の審判を受けた場合は代理権は消滅します。
    制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
  3. 誤り。任意代理人(委任による代理人)が復代理人を選任できるのは、①本人の許諾がある場合または②やむを得ない事由がある場合に限られます(民104条)。本肢のようにどちらの事由もないときは、復代理人を選任することはできません。
    委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
  4. 誤り。Bの名ではありません。復代理人は、本人との間で代理人としての立場を有します。したがって、復代理人Eは本人Aの名でAを代理します(民106条1項)。
    復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
したがって正しい記述は[1]です。