管理業務主任者試験 平成29年試験 問6

問6

AとBが、Bを受任者とする委任契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Bは、Aの承諾がなければ、受任者たる地位を第三者に譲渡することができない。
  2. Bが後見開始又は保佐開始の審判を受けた場合、AB間の委任契約は終了する。
  3. Bが、委任事務の処理に際して、自己の過失によらず損害を受けた場合であっても、Aの指図について過失がなければ、Bは、Aに対し損害賠償の請求をすることができない。
  4. Bが無償で受任した場合は、Bが委任事務の処理に際して善管注意義務に違反したときであっても、Bは、Aに対し債務不履行責任を負わない。

正解 1

解説

  1. [正しい]。委任契約も「契約」である以上、当事者の地位変更には民法の一般規定が及びます。契約上の地位は、当事者の一方と第三者との間で移転の合意をし、さらに相手方がその譲渡を承諾すれば第三者へ移転します(民539条の2)。したがって、受任者の地位を第三者に移転するためには、委任者Aの承諾が必要となります。
    契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
  2. 誤り。委任の終了事由は下記のとおりです。受任者Bの後見開始は委任の終了事由ですが、保佐開始では終了しません。
    • 委任者の死亡、破産
    • 受信者の死亡、破産、後見開始
  3. 誤り。受任者が委任事務の遂行上、自己に過失がなく損害を受けたときは、委任者に対して損害賠償を請求できます(民650条3項)。問題となるのは受任者の過失の有無であり、委任者の指図に過失があるか否かは要件とされていません。
    受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
  4. 誤り。委任の受任者は、有償・無償を問わず、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(善管注意義務)を負います。善管注意義務に違反すれば、債務不履行責任を免れません(民644条)。
    受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
したがって正しい記述は[1]です。