管理業務主任者試験 平成29年試験 問4
問4
Aは、所有するマンションの一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)をBに売却しようと考え、Cとの間で、甲の売却についてCを代理人とする委任契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。- AB間の売買契約の成立後に、甲についてAからBへの所有権移転登記手続を行う場合、Cは、AとBの双方を代理することができる。
- 甲の売却について、Cが、Aの許諾を得てDを復代理人に選任した場合、Cは代理権を失わず、CとDの両者がAの代理人となる。
- AC間の委任契約が解除されCの代理権が消滅した後に、CがAの代理人と称してBに対して甲を売却した場合、売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていたときは、Cは、Bに対し無権代理人の責任を負わない。
- AC間の委任契約が解除されCの代理権が消滅した後に、CがAの代理人と称してBに対して甲を売却した場合、売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていたときは、Bは、Aに対し相当期間内に当該行為を追認するかどうかの催告をすることができない。
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正解 4
分野
科目:1 - 民法細目:1 - 総則・意思表示
解説
- 正しい。当事者双方の代理人としてする行為は「双方代理」として原則禁止されます。しかし、売買契約の成立後、その履行手続きである所有権移転登記を行うことは、債務の履行にあたるため「双方代理」には当たりません(民108条1項)。
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
- 正しい。本人の許諾を得て復代理人を選任しても、元の代理人の代理権は消滅せず併存します。したがって、CとDの両者がAの代理人としての地位を持ちます。
- 正しい。無権代理人の責任は、意思表示の相手方が代理権の不存在について善意無過失のときに限り、追及することができます(民117条)。したがって、相手方Bが代理権の不存在を知っていた場合、無権代理人Bは責任を負いません。
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。 - [誤り]。無権代理行為の相手方が本人に対して行う追認の催告は、当該相手方の善意や過失にかかわらず行うことができます(民114条)。よって、Bが代理権の存在を知っていたときでも催告は可能です。
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
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