管理業務主任者試験 平成29年試験 問2
問2
甲マンション(以下、本問において「甲」という。)において生じた不法行為に関する次の記述のうち、民法、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- 甲の管理組合法人の防災担当理事Aが、過失により防災訓練実施中に区分所有者Bにけがをさせた場合、甲の管理組合法人とともにAもBに対して損害賠償責任を負う。
- 甲の管理組合法人から設備点検を受託している設備会社Cの従業員が、過失により甲の施設を点検中に設備を損傷した場合、Cは、その従業員の選任及び監督について過失がなかったときでも、甲に生じた損害について損害賠償責任を負う。
- 甲の区分所有者Dが、過失により浴室から漏水させ、階下の区分所有者Eに損害を与えた場合、EがDに対して損害賠償請求をした時からDは遅滞の責任を負う。
- 甲の大規模修繕工事に際し、同工事を請け負った建設会社の従業員が、過失により建築資材を地上に落下させ、通行人が負傷した場合、甲の管理組合法人は、注文又は指図について過失がない場合でも、当該通行人に対して損害賠償責任を負う。
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正解 1
分野
科目:1 - 民法細目:5 - 不法行為等
解説
- [正しい]。過失により他人に損害を与えたため、A自身は不法行為の加害者として損害賠償責任を負います(民709条)。また、管理組合法人は、事業のためにAを使用している「使用者」に当たるため、被用者の行為について使用者責任を負います(民715条1項)。両者は連帯してBに対して責任を負うことになります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
- 誤り。使用者責任は、使用者が被用者の選任と事業の監督に相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害発生を防げなかった場合には免責されます(民715条1項)。したがって、従業員の選任と監督につき過失がなければ、Cは使用者責任を免れます。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
- 誤り。請求時点ではありません。不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生の時点で当然に履行期が到来し直ちに履行遅滞となります(最判昭37.9.4)。催告の必要もありません。
不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。
- 誤り。請負人の仕事は注文者の指揮命令から独立で行われますから、注文者が責任を負うことは原則としてありません。請負契約の注文者は、指図や注文に過失があった場合のみ、請負人の仕事について不法行為責任を負います(民716条)。したがって、注文・指図に過失がなければ、管理組合法人が責任を負うことはありません。
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
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