管理業務主任者試験 平成28年試験 問39

問39

以下のア~ウの記述は、最高裁判所の判決又は決定の一部に若干の修正をしたものであるが、(a)~(c)に入る用語の組み合わせとして、正しいものは、次の1~4のうちどれか。
  1. 区分所有法第59条第1項の競売の請求は、特定の区分所有者が、(a)に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものである。
  2. 区分所有法第31条第1項の「(b)を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。
  3. 本件専有部分にある排水管は、その構造及び設置場所に照らし、専有部分に属しない(c)に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。
  1. (a)規約遵守義務 (b)特別の影響 (c)専用使用部分
  2. (a)区分所有者の共同の利益 (b)特別の影響 (c)建物の附属物
  3. (a)区分所有者の共同の利益 (b)顕著な被害 (c)専用使用部分
  4. (a)規約遵守義務 (b)顕著な被害 (c)建物の附属物

正解 2

問題難易度
肢17.9%
肢279.8%
肢33.4%
肢48.9%

解説

〔aについて〕
区分所有法が定める4つの義務違反者に対する措置(行為停止、使用禁止、競売請求、引渡し請求)は、いずれも区分所有者等が区分所有者の共同の利益に反する行為をしている場合に認められるものです(区6条1項最決平28.3.18)。
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
(区分所有法第59条1項の)競売を請求する権利は,特定の区分所有者が,区分所有者の共同の利益に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として,区分所有者の共同生活の維持を図るため,他の区分所有者等において,当該行為に係る区分所有者の区分所有権等を競売により強制的に処分させ,もって当該区分所有者を区分所有関係から排除しようとする趣旨のものである。

〔bについて〕
規約の設定・変更・廃止が、専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、決議の前にその専有部分の所有者の承諾を得なければなりません(区31条1項)。この「特別の影響を及ぼすとき」とは、「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が当該区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合」を言います(最判平10.10.30)。
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。

〔cについて〕
本管から分岐して各住戸につながる枝管は原則としては専有部分とされますが、その構造及び設置場所に照らし、共用部分として取り扱われる部位があります(最判平12.3.21)。具体的には、各住戸の壁内部にあるものは専有部分、コンクリートスラブ内や天井裏に設置されている部分については共用部分(建物の附属物)とされます。
マンションの専有部分である甲室の床下コンクリートスラブと階下にある乙室の天井板との間の空間に配された排水管の枝管を通じて甲室の汚水が本管に流される構造となっている場合において、甲室から右枝管の点検、修理を行うことは不可能であり、乙室からその天井裏に入ってこれを実施するほか方法はないなど判示の事実関係の下においては、右枝管は、建物の区分所有等に関する法律二条四項にいう「専有部分に属しない建物の付属物」であり、区分所有者全員の共有部分に当たる。
したがって正しい組合せは[2]です。