管理業務主任者試験 平成28年試験 問6(改題)

問6

マンションの一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)の区分所有者A(以下、本問において「A」という。)の死亡により、法定相続人である子Bと子Cが甲を相続分2分の1ずつで共同相続した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. BとCが協議で遺産分割をするときには、自己のために相続開始があったことを知った時から3箇月以内にしなければならない。
  2. Bが、甲を単独相続するために、Aの死亡後、遺言書を偽造した場合でも、Bは、家庭裁判所がその欠格事由を認定しない限り、相続人としての資格を失わない。
  3. Bが、Cに無断で甲を単独で所有する旨の登記をした上で、Dに売却し、移転登記を完了させた場合でも、Cは、自らが相続した甲の持分について、登記がなくてもDに対抗することができる。
  4. Bの相続放棄によりCが甲を単独相続したが、その前に、Bが相続した甲の持分についてEが差押えをしていた場合には、CはEの権利を害することができない。

正解 3

解説

  1. 誤り。放棄や限定承認には原則3カ月以内という期間制限がありますが、遺産分割には『いつまでに』という制限はありません。特別な禁止がない限り、共同相続人がいつでも協議により行うことができます(民907条1項)。
    共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
  2. 誤り。相続人が被相続人の遺言書を偽造することは、相続人の欠格事由に該当します(民891条5号)。欠格は法律上当然に相続人の資格を失うものであり、家庭裁判所の認定は必要ありません。
    次に掲げる者は、相続人となることができない。
    ・・・
    五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
  3. [正しい]。共同相続した不動産は、遺産分割協議が成立するまでの間は共同相続人の共有に属します(民898条1項)。各相続人は法定相続分の持分を有しており、法定相続分までの部分に関しては、登記がなくても第三者に対抗することができます(民899条の2第1項)。Cが取得した持分は法定相続分と同じ2分の1ですから、Cは登記がなくても、相続した甲の持分をDに対抗できます。
    相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
    相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
  4. 誤り。相続放棄の効力は絶対的であり、何人に対しても効力を生じます。放棄をしたBは初めから相続人ではなかったものとみなされるため、差押えの対象となるBの持分は存在せず、差押えは空振りとなります。Eの差押えは無効であるため、CはEに対抗することができます(最判昭41.1.20)。
    相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち、当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて、相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、右相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をしたうえ、持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効である。
したがって正しい記述は[3]です。