管理業務主任者試験 平成28年試験 問5(改題)

問5

マンションの管理組合A(以下、本問において「A」という。)は、敷地に集会棟を新築する工事(以下、本問において「本件工事」という。)を行うため、建設会社B(以下、本問において「B」という。)との間で請負契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. Bが本件工事を完成できない場合に、それが当事者双方の責めに帰することができない事由によるものであったときは、AはBからの報酬の支払いを拒むことができない。
  2. Bが本件工事を完成したが、集会棟に契約内容に対する不適合があり、その不適合が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微でないときは、Aは契約を解除することができるが、Bに対し損害賠償を請求することはできない。
  3. 本件工事に伴い既存の共用部分に生じた損害について、区分所有者全員のためにAの管理者が原告となってBに訴訟を提起するには、その旨の規約の定めによるのではなく、集会の決議が必要である。
  4. Bが本件工事を完成しない間は、Aは、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。

正解 4

解説

  1. 誤り。双務契約では、当事者双方に帰責事由なく債務が履行できなくなった場合、その債務の債権者は反対給付の履行を拒むことができます(民536条1項)。本件工事が完成できなくなった場合、請負人Bの債務は履行不能により消滅し、注文者Aは報酬の支払いを拒めます。
    もっとも、すでに施工済みの部分が独立して利用でき注文者が利益を受ける場合には、その部分は完成とみなされ、Bはその部分についての報酬を請求できます(民634条1項)。
    当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
  2. 誤り。契約の解除は損害賠償請求を妨げません(民545条4項)。不適合が軽微でなければ解除権が認められ、請負人に帰責事由があれば債務不履行責任に基づく損害賠償請求も可能です。
    解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
  3. 誤り。管理者が、訴訟手続きの原告・被告となることは規約または集会の決議があれば可能です。規約だけでも足りるため、集会決議を唯一の要件とする本肢は誤りです(区26条4項)。
    管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
  4. [正しい]。請負契約の注文者は、仕事が完成するまでの間であれば、損害を賠償して請負契約をいつでも解除することができます(民641条)。なお、完成後は契約目的が達成されているため、損害を賠償しても解除できません。
    請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
したがって正しい記述は[4]です。