管理業務主任者試験 平成28年試験 問2(改題)

問2

マンションの管理組合A(以下、本問において「A」という。)の管理者B(以下、本問において「B」という。)が、その職務に関し、C会社(以下、本問において「C」という。)との間で取引行為(以下、本問において「本件取引行為」という。)をする場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. Bの本件取引行為に係る意思表示について法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合には、Aは、Cに対してその意思表示の無効を主張することができる。
  2. 第三者DがBに詐欺を行い、これによりBが本件取引行為に係る意思表示をした場合、Cがその事実を知り、又は知ることができたときに限り、Aはその意思表示を取り消すことができる。
  3. Bが、本件取引行為をする前に、補助開始の審判を受けていたときは、Bの代理権は消滅しているので、本件取引行為の効力は生じない。
  4. Bが管理者を解任された後に本件取引行為をしていたとした場合、Cがその解任の事実を知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときでも、本件取引行為の効力は生じない。

正解 2

解説

  1. 誤り。意思表示の錯誤があった場合、表意者はその意思表示を取り消すことができます。よって、無効を主張することはできません(民95条1項)。
    無効と取消しでは主に以下の点が異なります。
    • 無効:当初から効力なし、追認できない、主張できる期限に制限がない、誰でも主張できる
    • 取消し:取消すまでは有効、追認できる、取消しできる期間がある、取消権者のみが主張できる
    意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
  2. [正しい]。第三者の詐欺により行った意思表示は、意思表示の相手方がその事実について善意無過失でなければ取り消すことができます(民96条2項)。無条件に取消しを認めると、相手方の利益が害されるため取消し可能な場面が限定されています。
    相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
  3. 誤り。代理権が消滅するのは、代理人が後見開始の審判を受けたときです。補助開始の審判では代理権は消滅しません(民111条1項)。
    代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
    一 本人の死亡
    二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
  4. 誤り。解任後に行われた契約は無権代理行為となります。代理人が代理権を失った後に代理行為を行った場合、相手方が代理権消滅の事実について善意無過失であれば表見代理が成立します。表見代理が成立すると、契約行為の効果は本人に帰属します(民112条1項)。
    他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
したがって正しい記述は[2]です。