管理業務主任者試験 平成27年試験 問6

問6

Aが所有するマンションの専有部分甲(以下、本問において「甲」という。)を賃借するBが、第三者であるCに、当該賃借権を譲渡又は甲を転貸した場合に関する次の記述のうち、民法、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Bが、Aの承諾を得てCに転貸した場合、Aは、Bに対する賃料額を限度にCから支払いを受けることができる。
  2. Bが、Aの承諾を得てCに転貸した場合、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行により解除されたときは、Aは、Cに催告をして弁済の機会を与えなければ、賃貸借の終了をCに対抗することができない。
  3. Bが、Aの承諾を得ないでCに譲渡した場合、それがAに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときでも、Aは、Bとの間の賃貸借契約を解除することができる。
  4. BからCへの譲渡に関して、Aに不利となるおそれがないにもかかわらず、Aが当該譲渡を承諾しないときは、裁判所は、Bの申立てにより、Aの承諾に代わる許可を与えることができる。

正解 1

解説

  1. [正しい]。適法に転貸を受けた転借人は、賃借人(転貸人)の債務の範囲を限度として、原賃貸人に対して債務を直接履行する義務を負います(民613条1項)。したがって、原賃貸人AはBに対する賃料額の範囲内で、転借人Cに請求することができます。
    賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
  2. 誤り。適法な転貸が行われている場合において、原賃貸借契約を債務不履行解除するときは、民法の原則どおり賃借人に催告すれば足り、転借人に対して催告したり賃料支払の機会を与えたりする必要はありません(最判昭37.3.29)。
    適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
  3. 誤り。賃借権を譲渡や転貸が無断で行われた場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できるとされています(民612条)。しかし、「信頼性破壊の法理による制限」と呼ばれる判例法理があり、譲渡や転貸が賃貸人との信頼関係を破壊するような背信的行為でない特別な事情がある場合には、賃貸人は解除権を行使できません(最判昭28.9.25)。
    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
    賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。
  4. 誤り。借地上の建物が譲渡される場合において、借地権の譲渡や転貸を地主が認めない場合には、裁判所は承諾に代わる許可をすることができます(借地借家法19条1項)。しかし、建物賃借権についてはこのような制度はありません。
    借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
したがって正しい記述は[1]です。