管理業務主任者試験 平成27年試験 問4(改題)

問4

マンションの区分所有者A(以下、本問において「A」という。)が、その専有部分をBに賃貸している場合に、Bの賃料の支払いに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. 第三者であるCがBの賃料を支払うことについて、Bが反対の意思を表示したときは、たとえCが正当な利益を有していても、Cは、Bに代わって賃料を支払うことはできない。
  2. Aの債権者であるDが、AのBに対する賃料債権を差し押さえたにもかかわらず、BがAに賃料を支払った場合、Dは、それにより受けた損害の限度において、さらに弁済をすべき旨をBに請求することができる。
  3. Bの賃料の支払いをAがあらかじめ拒絶した場合、BはAに、賃料支払いの準備ができている旨を通知し、その受領を催告すれば、当該賃貸借の債務不履行の責任を免れることができる。
  4. Bの賃料の支払いをAが受け取らない場合、Bは、当該賃料を供託すれば、当該賃料債務を免れることができる。

正解 1

解説

  1. [誤り]。正当な利益を有しない第三者は、債務者・債権者の意思に反して弁済することができません。これに対して、正当な利益を有する者は、第三者弁済が制限・禁止されている場合を除き、常に弁済できます(民474条2項)。Cは正当な利益を有する者のため、Bの意思にかかわらず賃料の支払いが可能です。
    弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
  2. 正しい。差押債権者は、第三債務者が差押え命令に反して債務者に弁済したとき、損害の限度で再度弁済を請求できます(民481条1項)。したがって、差押債権者Dは、Aに賃料を支払った第三債務者Bに対して、さらに弁済すべきことを請求可能です。
    差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
  3. 正しい。債権者が受領を拒むとき、債務者は弁済の準備をしたことを通知し、受領を催告すれば「弁済の提供」となり、その時点から債務不履行責任を免れます(民493条民492条)。したがって、受領を拒絶した貸主Aに対し、支払い準備ができたことを通知し、受領を催告したBは、債務不履行責任を負いません。
    弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
    債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
  4. 正しい。弁済の提供をしても債権者が受領を拒むときは、債務者は弁済の目的物を供託することができます。供託をすれば債権は消滅するため、賃料を供託したBは、賃料債務を免れます(民494条1項)。
    弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
    一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
    二 債権者が弁済を受領することができないとき。
したがって誤っている記述は[1]です。