管理業務主任者試験 令和7年試験 問1

問1

次の事例のうち、民法の規定によれば、善良な管理者としての注意義務まで求められないものはどれか。
  1. Aは、隣人Bが一週間ほど留守宅にしていることを知っていたので、B宅に届いた宅配品甲を、Bに無断で宅配業者から預かった。この場合におけるAの甲についての注意義務
  2. Aは、Aが修理したB所有の自動車甲の修理代金をBが支払わないので、支払がされるまで、甲の引渡しを拒絶した。この場合におけるAの甲についての注意義務
  3. Aは、友人B所有の自動車甲を無償で移転登録手続することを約し、Bから甲の引渡しを受けた。この場合におけるAの甲についての注意義務
  4. Aが、同居していたAの父Bが生前所有していた家屋甲にBの死亡後も継続居住しているが相続は放棄している。この場合における、相続人又は相続財産の清算人に引き渡すまでのAの甲についての注意義務

正解 4

問題難易度
肢113.4%
肢211.6%
肢315.3%
肢459.7%

解説

  1. 誤り。法律上の義務がないのに他人のために事務をすることは、民法上の「事務管理」に当たります。事務管理を行う者は、急迫の危害を免れるために行ったときは損害賠償責任を負わない(悪意・重過失は除く)とされており、この反対解釈として、通常の場合には善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負うと解されています(民698条)。
    管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
  2. 誤り。Aが代金の支払いを受けるまで自動車の引渡しを拒絶することは、留置権の行使に当たります。留置権者は、留置物を善管注意義務をもって占有しなければなりません(民298条1項)。
    留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
  3. 誤り。AはBから自動車の移転登録手続きという事務処理を引き受けているため、委任契約の関係となります。委任の受任者は、有償・無償にかかわらず、善管注意義務を負います(民644条)。
    受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
  4. [正しい]。相続を放棄した者は、占有する相続財産を相続人等に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって管理する義務を負います(民940条1項)。この注意義務は、一般に求められる善管注意義務よりも軽いものであり、あくまで自分の物と同じ扱いで管理すれば足ります。なお、相続を放棄する前の熟慮期間中にもこの義務があります。
    相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
したがって誤っている記述は[4]です。