管理業務主任者試験 令和6年試験 問1(改題)

問1

共有に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も不適切なものはどれか。
  1. 裁判所は、共有者やその所在が不明な共有建物について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、管理不全建物管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
  2. 共有者が、持分に応じた管理の費用の支払を1年以内に履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
  3. 共有物が分割された場合、各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。
  4. 共有物の持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の持分について遺産の分割をすべきときは、相続開始の時から10年を経過しなければ、当該共有物の持分について裁判による分割をすることができない。

正解 1

解説

  1. [不適切]。所在不明の建物について裁判所が発するのは「所有者不明建物管理命令」であり、選任されるのは「所有者不明建物管理人」です。管理不全建物管理人は、所有者が判明しているにもかかわらず管理が不適切な場合に用いられる制度であり、本肢は管理人の類型を取り違えています(民264条の8第1項)。
    裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。
  2. 適切。共有物の管理費用は、各共有者がその持分に応じて負担します。共有物の管理費用を1年以内に負担しない共有者がいる場合、他の共有者は償金を支払うことでその持分を取得できます(民253条)。
    各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
    2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
  3. 適切。共有物分割は売買に準じた効果を生じるため、取得物の欠陥について共有者相互が売主と同様の担保責任を負担し合います。負担の範囲は持分割合によって決まります(民261条)。
    各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。
  4. 適切。相続財産に属する共有持分は、相続開始から10年が経過するまでは裁判上の共有物分割請求はできません(民258条の2第2項)。相続財産に属する共有持分はまず遺産分割で解決すべきものとされ、遺産分割ができない場合に遺産共有関係を解消する手段として裁判手続きが用意されている形です。
    【補足】
    原題は「共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において」という記述となっており、公式解答では不適切肢とされました。共有物の全部が相続財産に属する場合は、裁判所には遺産分割を請求によるべきであり、共有物分割は請求できないためです。当サイトでは学習効率を考えて単一解答となるように改題しています。
    共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
したがって不適切な記述は[1]です。