管理業務主任者試験 平成27年試験 問1

問1

マンションの管理組合A(以下、本問において「A」という。)の管理者B(以下、本問において「B」という。)が、その職務に関し、C会社(以下、本問において「C」という。)との間で取引行為をした場合に関する次の記述のうち、民法、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Bが、Aのためにすることを示さないでした意思表示は、Cが、BがAのためにすることを知っていたときでも、Bがした意思表示の効果はAに帰属することはない。
  2. Bが、自己の利益を図るために職務の範囲内の行為をした場合には、Cがそのことを知ることができたときでも、Bがした行為の効果はAに帰属する。
  3. Bは、Bの職務に関しその代理権に加えられた制限について、その制限を知らなかったCに対抗することができない。
  4. Bが、職務の範囲外の行為をした場合において、Cが、Bの職務の範囲外であることを知ることができたときでも、CはBがした行為の効果をAに主張することができる。

正解 3

解説

  1. 誤り。代理人が本人のためにすることを示す(顕名:けんめい)ことをせずに行った意思表示は、原則として代理人が自己のためにしたものとみなされます。ただし、代理人が本人のためにすることについて、相手方が善意無過失でなかったときは、その効果は本人に帰属します(民100条)。したがって、相手方Cが、代理人Bの行為が本人Aのためのものであると知っていた(悪意)なら、その効果はAに帰属します。
    【補足】
    実務上は、管理者が管理組合を代表して業者と契約をする際に、毎回必ずしも顕名が行っているわけではありません。このような場合でも、相手方が管理組合の意思表示であることを知っているため、有効な契約となります。
    代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
  2. 誤り。代理人が自己または第三者の利益を図る意図で代理権の範囲内の行為を行った場合、相手方がその事実について善意無過失でなかったときは無権代理行為となります(民107条)。したがって、相手方がそのことを知ることができた(有過失)ときは、Bのした行為は無権代理となります。
    【参考】
    代理権の範囲内の行為のため、取引の安全性の要請から、原則としてはその効果を本人に帰属させるべきです(そんな信用できない人を代理人にした本人に落ち度があるため)。しかし、本人が害されることを知っていた相手方まで保護する必要はありません。このようなバランスから、相手方が悪意・有過失に限定して無権代理行為とされます。
    代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
  3. [正しい]。区分所有法上の管理者の代理権に加えられた制限は、善意の第三者には対抗することができません(区26条3項)。本肢のCが、管理者Bの代理権の制限を知らなかった場合、管理組合Aはその制限をCに対抗できません。
    管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
  4. 誤り。代理人が代理権の範囲外の行為をした場合、相手方が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があり、かつ善意無過失であれば表見代理が成立します(民110条民109条1項)。したがって、Cが職務の範囲外の行為であることを知ることができた(有過失)なら表見代理は成立せず、効果が本人Aに帰属することは主張できません。
    前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
    第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
したがって正しい記述は[3]です。